真のアンチエイジング(がん・心疾患・脳血管障害が起きにくい身体を作る)
真のアンチエイジングとは?
アンチエイジングとは、日本語では抗加齢という意味で、加齢にともなう変化に抗うことを意味します。アンチエイジングと言えば、美容関連の美肌、しわ・シミ等への治療が一般的です。しかしながら、人生100年時代と言われる現在、100歳まで生きるためには皮膚だけ手当てしていては寿命に影響しません。100歳まで生きるためには、三大疾病である、がん・心疾患・脳血管障害が起きにくい身体を作る、そんな病を予防する環境を整えることが必要になります。
がん(悪性腫瘍)
統計学的に頻度の高いがんは、男性では前立腺がん、大腸がん、胃がん、肺がんです。女性では、乳がん、大腸がん、肺がん、胃がんです(胃がんと肺がんは、男女でほぼ同頻度;日本対がん協会からの報告)。これらがんの予防法はまだ確立されていませんが、誘発因子は明らかになっています。
前立腺がん
明らかに欧米での発生が多く、欧米型の食事パターン(肉類、加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、紅茶、マヨネーズ、ソース、魚介類などが関連した食事)がリスクを高めると言われています。加えて、国内の研究では、第一近親者(親子または兄弟)に1人前立腺がん患者がいる場合の罹患リスクは5.6倍とされています。
大腸がん
喫煙、飲酒、肥満、運動不足、食物線維の摂取不足、食生活の欧米化、と言われており、これらを控えることに加えて、野菜の摂取が望ましいと言われています。
胃がん
第一にピロリ菌感染ですが、それ以外に、喫煙、過度な飲酒、塩分の多い食事、野菜や果物の摂取不足、 ストレスが誘発因子と言われているので、生活習慣の見直しと野菜食や緑茶の摂取が推奨されます。
肺がん
喫煙が確実ですが、その他にアスベスト、ラドン、ヒ素、クロム化合物、ディーゼル粒子、石綿(アスベスト)、PM2.5などが挙げられます。近年、注目されているPM2.5は粒の直径が2.5μm以下の粒子で、有害な化学物質や発がん性物質を多く含んでいます。長期間吸引し続けると気管支の異常や肺がんの発症リスクが高まります。つまり、都市部における大気汚染により肺がんリスクが1.5倍程度にまで増加することが報告されています。予防するには、禁煙、節度のある飲酒、バランスの取れた食事、適度な身体活動、適正な体形、感染予防などが効果的といわれています。また、野菜や果物の摂取、カロチノイド類の摂取も肺がんに対する確実な予防要因として挙げられています。
乳がん
高カロリー・高脂肪の食生活による思春期女性の初潮の低年齢化や肥満、晩婚・少子化による初潮から第1子出産までの期間の長期化、飲酒、喫煙、閉経後の肥満、運動不足、糖尿病の既往なども乳がんを発症する要因として挙げられます。
以上、いずれの悪性腫瘍のリスク因子として共通しているのは、生活習慣によるものです。野菜の摂取を含めたバランスの取れた食生活がこれらの悪性腫瘍の予防に繋がると言っても過言ではありません。最近では、運動によって筋肉から分泌されるマイオカインががんの進展の予防に繋がると報告され、がんに患ってしまった患者さんで可能な範囲でウォーキング等エクササイズを積極的に行うことが推奨されています。
心疾患と脳血管障害
いずれも動脈硬化に原因があり、その原因には以下が挙げられます。
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症(血中コレステロールや中性脂肪の増加)
・喫煙
・肥満(メタボリックシンドローム)
・加齢
・ストレス
・運動不足
これらはどれも生活習慣病であり、生活習慣の改善とそれら疾患の治療がとても重要になります。
アンチエイジングの候補薬
さて、以上のように、アンチエイジング治療の基本は生活習慣の見直しが重要となります。生活習慣病の予備軍と言われる方は潜在的に数多いと予測されます。現存する内服薬で老化を予防すべくアンチエイジングは不可能でありません。ここからは、その候補薬となるお薬について解説します。
アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
ARBは降圧薬の一つです。アンジオテンシンIIタイプ1受容体に結合することで、その作用を遮断し降圧効果を発揮します。アンジオテンシンIIタイプ1受容体は血管平滑筋に分布していて、体内の昇圧物質であるアンジオテンシンIIがこの受容体に結合すると血管は収縮し血圧が上昇します。この受容体をARBで遮断することで、アンジオテンシンIIが結合できなくなり、血圧が低下します。ARBには、臓器を守る作用があるとされているため、心臓や腎臓が傷んでいると患者さんに積極的に用いられます。また、糖尿病の発症を予防する効果も期待されています。さらに、このARBにはがんの発生を抑制する可能性が示唆されています。最近、血圧が高くなってきた、という方にはうってつけの薬剤の一つです。オルメテック、アジルバ、ディオバンといった薬剤がそれにあたります。
選択的SGLT2阻害剤
肥満の原因は、過食や運動不足といった環境によるものがあります。また、年齢を重ねることによって基礎代謝が低下していくことも肥満になりやすい原因の1つとされていますが、簡単に説明すれば、摂取カロリーが消費カロリーを上回っているからです。
SGLT2阻害薬は、SGLT2(尿細管での糖吸収を司る)の働きを抑え、尿細管で糖が血液にもどらないようにして糖を尿に排泄させます。この結果、血糖が下がります。糖とともに水分も排泄されるため、尿の量が増えます。結果として、糖が尿に排泄されるため、消費カロリーが増加して、結果として体重減少につながります。肥満傾向の若年?壮年期の方がSGLT2阻害薬の良い適応になると考えます。薬の作用で、1日あたり約400キロカロリーの糖が尿中へ排出されるため、ダイエット効果が期待できます。内服して3ヶ月で、平均で体重のマイナス3%程度、50kgの人なら1~2kg、70kgで2kg程、減量可能です。フォシーガ、ジャディアンス、スーグラといった薬剤が現在使用されています。
GLP-1受容体作動薬
GLP-1とは体内に存在するホルモンで、食欲を抑制する働きがあり、GLP-1を刺激するGLP-1作動薬は糖尿病治療薬として、世界中で承認されており、副次的に減量効果があることが報告されています。欧米では既に肥満治療薬として用いられています。GLP-1は食欲を抑える作用があり、「1回の食事で食べ過ぎない」「間食をしないようにする」と言った、ダイエットの基本である食生活の改善をサポートしてくれます。自然と摂取カロリーが減るため、健康的に体重が落ちていきます。リベルサスが唯一、内服薬で処方可能です。
PDE5阻害薬(タダラフィル)
元来、性機能障害(ED)治療薬として開発され、その後、前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤としてガイドラインでも推奨され、広く普及しています。血管平滑筋の弛緩などに関わるcGMPはホスホジエステラーゼ5(PDE5)という酵素によって分解されるため、本剤はPDE5を阻害することで、血管拡張作用や前立腺及び膀胱における平滑筋弛緩作用により血流改善作用があり、排尿障害を改善する薬剤です。ただし、膀胱や前立腺などの下部尿路だけに作用するのではなく、全身に働きます。cGMPは心血管系だけでなく、脳 神経系を含め、全ての細胞で細胞内情報伝達物質としての役割を担っています。したがって、PDE5阻害薬は全身のアンチエイジング効果が期待されます。さらに血管拡張作用があるため血流を円滑にするため、血管でのコレステロール沈着や血栓を予防し、全身の血管の若返り、健康増進効果が期待できます。結果として、心血管リスク(狭心症や心筋梗塞など)の軽減に効果があるとも言われています。さらには、血管拡張作用・血流促進作用により筋肉血 流量も増加するため、筋力トレーニングによる筋力向上にも効果的で筋量増加にともない、男性ホルモン量も上昇します。テストステロンの増加効果として、性機能改善、男性更年期障害改善、記憶力・集中力向上、精神安定、筋肉増強、生活習慣病予防などの若返り効果が期待できます。現在、ザルティアが処方可能な薬剤です。
ひとりひとりの患者様に、オーダーメイドな治療が大切
アンチエイジングの方法にはいろいろなアプローチの方法がありますが、患者様でひとりひとり基礎疾患が異なりますので、「友人Aさんが効いたっていうから自分にも有効」というわけではありません。場合によってはご希望のおくすりが投与禁忌であったりする場合があります。したがって、患者様ひとりひとりの全身状態を十分に把握してから、どの薬剤が的確で安全か?考える必要があります。また、糖尿病ではないのに糖尿病治療薬をご希望の場合には、自費診療となりますので、ご注意ください。いずれにしましても、ご希望の場合はお気軽にご相談ください。