頻尿と過活動膀胱
頻尿とは?
「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を頻尿といいます。一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。しかし、1日の排尿回数は人によって様々なので、8回以下の排尿回数でも自分自身で排尿回数が多いと感じる場合には頻尿といえます。頻尿の原因は様々ですが、過活動膀胱、残尿の存在(排尿後にも膀胱の中に尿が残ること)、多尿(尿量が多いこと)、心因性頻尿、そして尿路感染・炎症、腫瘍などが原因とされています。
過活動膀胱って何ですか?
排尿にともなう下部尿路の症状は
・蓄尿症状(尿をうまく貯められない症状)
・尿症状(尿をうまく出せない症状)
・排尿後症状
の3種類のいずれかに当てはまります。
蓄尿症状には、昼間頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感(急に起こる,我慢できない強い尿意),尿失禁があります。
尿意切迫感を必須症状とする過活動膀胱(overactive bladder: OAB) は多くの人を悩ませる代表的な下部尿路症状で,加齢とともに増加し、生活の質(QOL)は低下します。膀胱に尿が十分に貯まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮する病気で、急に尿がしたくなって我慢ができず(尿意切迫感)、トイレに何回も行ったり、尿がもれてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。1回の排尿量は少なくなり、何回もトイレに行くようになります。


過活動膀胱の原因は?
過活動膀胱は日本で1000万人以上の男女が罹患する頻度の高い病気です。 脳梗塞やパーキンソン病などの脳や脊髄の病気のために、膀胱のコントロールが効かなくなる、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になる、などの原因で発生しますが、加齢による老化現象として起こったり、原因不明であったりすることも少なくありません。
最近注目すべきは、動脈硬化などによって膀胱を栄養する血管が細くなり膀胱の血流が悪くなる「膀胱虚血」です。こうした膀胱の血流障害は膀胱機能障害のさまざまな病態の根幹をなすと考えられており、高血圧や糖尿病等の生活習慣病によって慢性的に膀胱虚血を来し、結果として過活動膀胱に至ることがわかってきています。
過活動膀胱はどうやって診断しますか?
尿流動態検査(排尿の勢いを数量化して評価する検査)や残尿量の測定(痛みをともなわない簡単な検査です)、画像診断や症状質問票検査(アンケート調査)や排尿日誌等によって、原因を探していきます。
過活動膀胱の治療は?
患者さん個々の状況に合わせて考えていきます。特に性別によって、その原因は大きく異なります。男性の場合は前立腺肥大症の有無によって、女性の場合は骨盤臓器脱の有無によって診断、治療の方針は変わるからです。前立腺肥大症や骨盤臓器脱がない場合は、生活習慣を含めた行動療法を行います。現在、生活習慣病を治療中の方は、膀胱虚血が潜在的に起こっている可能性があり、生活習慣病のコントロールをしっかり行うことで膀胱機能(尿を貯めて、出したい時に出す機能)や膀胱容量の低下を予防することが可能です。
それでも改善しない場合は、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬の内服を行うこととなります。
こうした、治療を経て改善しない場合は、ボツリヌス毒素(ボトックスR)膀胱壁内注入療法を行うこととなります。当クリニックでも行いますので、ご相談ください。
残尿量が増加する場合はどういう時?
残尿とは、排尿後も膀胱内に尿が残る状態をいいます。健康であれば、1回排尿量は250-500ccで、残尿は0ccです。前立腺肥大症などによる排尿障害(尿の排出障害)が進行すると残尿が発生します。また、動脈硬化、糖尿病、腰部椎間板ヘルニア、子宮がん・直腸がんの手術などで、膀胱を収縮させる神経が障害されると、膀胱が通常通りに収縮できなくなって排尿障害を引き起こし残尿が発生します。膀胱内に残尿があると、結果的に尿を貯める膀胱のスペースが少なくなるために、1回排尿量は少なくなり、トイレに行く回数が増えてしまいます。残尿量の測定検査は簡単な超音波検査で数値化できます。
尿が増える場合はあるのでしょうか?
多尿とは、1日の尿量が著しく増えた状態をいいます。膀胱や尿道に病気がなくても、糖尿病などの内分泌疾患、水分の多量摂取、薬剤(利尿剤)による尿量の増加が頻尿の原因となります。この場合には、1回の排尿量は正常(200ml以上)であるにも関わらず、何回もトイレに行くことになります。特に、男性の夜間多尿には加齢にともなって抗利尿ホルモンの低下によって、夜間尿量が増加していることが多く、そのような場合は、抗利尿ホルモン製剤を服用することで改善します。
心因性の頻尿もありうる
心因性の頻尿は、膀胱・尿道の病気もなく、また尿量も問題ないにも関わらず、トイレのことが気になって何回もトイレに行ってしまう状態です。心因性なので、夜寝てしまえば排尿のことを気にすることはないので、通常夜間の頻尿はないことが多く、また朝起床時の排尿量は正常です。
尿路感染・炎症・腫瘍も頻尿の原因になる
膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染が起こると、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。間質性膀胱炎は原因不明で、膀胱に慢性の炎症を起こす病気ですが、長期間続く頻尿、膀胱充満時の下腹痛が特徴的です。膀胱がんの重要な症状は血尿ですが、まれに膀胱がんによる膀胱刺激症状として頻尿がみられることがあります。しかしながら、これら疾患は、他の典型的な症状や画像検査等によって発見され、疾患を治療することで頻尿は軽減します。
頻尿に対する対処方法は?
頻尿が気になる際には、排尿日誌をつけることが勧められます。排尿日誌では、トイレに行った時間と排尿の量、水分を摂った時間と量などを3日ほど記載していただきます。もし、明らかに水分を多く摂取しているようであれば水分摂取の調節により改善しますが、病気に関わるような場合は原因を明らかにして、その原因に応じた適切な治療や対処をする必要があります。いずれにしましても、気になるようであれば、ご相談ください。
