前立腺肥大症
症状
排尿症状(尿を出しづらい症状)、蓄尿症状(尿を貯めづらい症状)と個々の患者さんによって症状は多彩です。夜間頻尿、残尿感、尿意切迫感、尿線狭小、排尿時間延長、尿閉等の症状があり、これらの症状は国際前立腺症状スコア(IPSS)によって排尿状態を数量化して評価が可能です。
診断
IPSS(表1)において、19≧IPSS≧12では中等症、IPSS≧20では重症と分類されます。ただし、IPSSスコアが低くても、QOLスコアが高い場合は治療適応となります。

出典:国際前立腺症状スコア(I-PSS)・QOL スコアシート
尿流量測定
排尿して頂いて、尿の勢いを数量化する検査です。この検査によって、尿の勢いや排尿にかかる時間が計測可能です。
残尿測定
排尿後の膀胱に残った残尿量を超音波検査で測定します。

前立腺体積の測定
前立腺体積は通常10-15mlで肉眼的にはくるみ大ですが、肥大が生じると2倍以上、時には100mlと大きくなります。この状況を超音波検査で測定可能です。
血清PSAの測定
前立腺がんの鑑別も重要であり、血清PSAを測ります。
上記を総合的に判断して、前立腺肥大症の程度について評価を行います。基本的には、薬物療法から開始して無効であったり尿閉を来した場合、手術を考慮します。
薬物療法
α1遮断薬
タムスロシン、シロドシン、ナフトピジルのうち、いずれかを投与することが推奨されています。前立腺部尿道や膀胱頸部に分布するα1受容体を阻害することで、狭くなった前立腺部尿道近辺を開きやすくして、排尿を助ける効果がります。あくまで機能的改善の効果で前立腺自体に組織学的な変化は来しません。
PDE5阻害薬
PDE5酵素を阻害することで、体内の一酸化窒素(NO)を上昇させ、血管平滑筋や膀胱平滑筋を弛緩させます。排尿ならびに蓄尿症状の改善につながります。この薬剤もあくまで機能的改善の効果で前立腺自体に組織学的な変化は来しません。
5α還元酵素阻害薬
デヒドロテストステロンの生成を阻害することで、前立腺肥大症を抑制し、結果として前立腺体積を減少させます。6ヶ月間の服用で約30%の前立腺体積の減少が期待できます。
手術療法
経尿道的前立腺切除術
麻酔下に経尿道的に肥大した前立腺組織をくり抜く、もしくは切除する手術です。皮膚を切開したりする手術ではなく、経尿道的に電気メスやレーザーを使って前立腺肥大を取り除きます。手術後には止血目的で尿道カテーテルの留置が数日間必要となりますし、後出血や逆行性射精等の合併症があります。
水蒸気注入療法
Rezumシステムを用いて、前立腺組織に針を刺して水蒸気を散布することで前立腺組織の壊死そして縮小を期待できる治療法です。手術時間は15分程度で、当院では日帰りで手術が可能です。経尿道的前立腺切除術で起きる合併症はまず起きません。