進行性前立腺がんの治療方針について
前立腺がんを含め、あらゆるがんについてはその治療方針がガイドラインで定められています。ガイドラインはあらゆる医学的なエビデンス(臨床研究で実証された論文報告)に基づいて作成されています。しかしながら、そのガイドラインに従うだけで良いのでしょうか?
私の元を受診する患者さんのうち、多いのが以下のような進行性前立腺がんの患者さんです。
・転移はないが、PSA 20ng/ml以上で、画像では前立腺周囲に浸潤の可能性が指摘されているため、手術が出来ないと言われたが、手術できないでしょうか?
・数年前に前立腺がんに対して手術を受けたが、最近になってPSA再発が疑われて薬物療法(または放射線治療)を勧められたが、自分としては様子をみたい。
・PSAが4桁台で、リンパ節、骨にも転移していて、余命1年と言われてしまったが、どうしたら良いでしょうか?
いずれも判断に迷う難しい患者さんです。
どの患者さんも主治医からの提案に満足されていないため、私を訪ねてこられたのです。と言って、前医の先生が誤った判断はしているように思えません。大抵はガイドラインに準拠して常識的な治療法を提案しているのです。ただ、患者さんとしては、もう少し積極的な治療って無いのでしょうか?というのが本音だと思うのです。
そこで、私は患者さんと相談しながら、希望される治療方針に限りなく近い形を取って治療に当たります。もちろん、ガイドラインや常識的な範疇から大きく外れる選択肢は取らないよう心がけています。前立腺がん手術は、開腹手術から腹腔鏡手術、そしてロボット支援手術と進化しました。そのプロセスを自ら経験し、1000人以上の患者さんを執刀する機会を頂きました。それ以外に、薬物療法で経過を見させて頂いている患者さんも大勢いらっしゃいます。
いずれにしても、最新の知見やガイドラインを考慮しつつ、患者さん一人ひとりのご希望に沿った最適な治療法を模索することは必要であり、実臨床における治療というのは、やはり個人的な臨床経験から判断することになります。
現在の治療を疑問を感じた場合、ご相談いただければと思います。