骨盤臓器脱
女性の頻尿の原因となる疾患の一つで、骨盤臓器脱とは子宮、膀胱、直腸などの骨盤内にある臓器が膣のほうから下垂し、出てくる病気の総称です。骨盤臓器脱は、閉経後の女性に多く、高齢になるほどリスクが高くなる病気です。50歳以上の女性では約40%が罹患していると言われています。手術が必要な骨盤臓器脱は年間1000人の女性のうち1.5~1.8人で、ピークは60~69歳と言われています。
骨盤内で臓器を支えている骨盤底筋が緩み、臓器が下がってしまうことで発症します。閉経すると女性ホルモンが低下し、骨盤臓器の支持組織が加齢とともに弱くなることが原因です。また、出産時のダメージや、重い物を持つ仕事、便秘、肥満、慢性的な咳やクシャミを伴う呼吸器疾患、長時間の立ち仕事や力仕事なども骨盤底に強い腹圧がかかってしまうため、骨盤臓器脱のリスクになります。
骨盤臓器脱は直接命にかかわる病気ではありませんが、内臓が体外に出ることで感染を起したり、臓器の下垂に伴う違和感、膀胱や直腸が下がることで尿や便が出にくくなるといった症状がみられます。そのため、QOLを低下させる厄介な病気です。
骨盤臓器脱にはどんな症状がありますか?
・頻尿、排尿困難
・異物感(何かが下りてくるような感じ)
・ピンポン球のようなものを会陰部に触れた
・腰痛
・重い感じ
・引っ張られる感じ
・排尿や排便のために指で脱を整復させる必要がある
・下着にこすれて血液が付着
骨盤臓器脱の検査は?
問診と内診台での診察を行います。わざと咳をしたり力んだりして頂いて、骨盤臓器脱の種類や程度を確認します。排尿状態を確認するために尿流測定やエコーによる残尿測定、MRI検査、膀胱鏡検査などの詳しい検査を行うこともあります。
治療には、保存的療法と手術
(1)骨盤底筋訓練
軽度の下垂の場合は、骨盤底筋訓練で骨盤底筋群を強くすることで、症状の改善が期待できます。しかし中等度以上の場合は、改善はほとんど得られません。
(2)ペッサリーリング
膣内にペッサリーリングを入れて、骨盤内臓器の脱出を防ぎます。3~6ヵ月毎に外来で交換します。排便時などいきんだ際にペッサリーリングが落下してしまったり、膣内にびらんができてオリモノがふえたり出血したりすることがあり、長期に継続できない場合があります。
(3)手術療法
症状が強い場合は手術が適応になります。脱出している臓器や程度によって、従来型のメッシュを使用しない手術、経腟メッシュ(TVM)手術、ロボット支援仙骨膣固定術(RSC)などがあります。